漢方薬の味や飲み方
漢方を飲んだことがない方からすれば、味の想像もつかないはず。ここでは具体的にどのような味がするのか?についてご紹介します。
漢方はどんな味?
漢方は体に良いことはわかっているものの、苦くて飲みにくいものというイメージがありますよね。確かに苦い漢方薬がほとんどです。
ただ、絶対に飲めないほど苦いのかというと、個人差が大きいといえるでしょう。かなり苦いと聞いていたものの、実際に飲んでみたところ何ともなかったという方もいるのです。
また、漢方薬のすべてがとにかく苦いわけではなく、あまり苦くないものもあります。例えば、小健中湯(しょうけんちゅうとう)という漢方薬はどちらかというと甘みを強く感じることもあり、甘くて苦手…という方もいるほどです。
他にも酸っぱいものや辛いものなど一口に漢方薬といっても味の種類は様々です。漢方薬は五味があります。甘み、酸味、苦み、辛味、かん味(塩辛さ)があるので、自分の味
の好みに合わせて向いているものを探しましょう。
おいしいと思える漢方薬もある
漢方薬の味をどう感じるか?という点については個人差が大きいです。同じ漢方薬を飲んだとしても「苦すぎてこんなの飲めるわけない!」と感じる方もいれば、「飲みやすい」と感じる方もいます。
これは苦味成分が得意かどうか?というよりもその漢方薬と相性が良いか悪いか?が大きく関係しているのです。実は漢方薬は自分の体に合ったものや体質に合ったものを選べばおいしく感じると言われています。
漢方薬は体質改善効果も大きいとされていますが同じ漢方薬を取り続けて体質が改善したところ、急にまずいと感じるようになることもあるのだとか。あまりにもまずくて飲めない…と感じる漢方薬は今現在自分の体が求めていない成分なのかもしれません。
苦いことで有名な漢方薬は?
漢方薬は様々な生薬を組み合わせて作られているのですが、苦い生薬を使って作られている漢方薬はどうしても苦味が強いです。
飲みにくい漢方薬として代表的ともいえるのが黄連解毒湯(おうれんげどくとう)だといえるでしょう。
二日酔いや胃炎、皮膚炎、鼻血、高血圧の改善に活用される漢方薬です。黄連(おうれん)と黄柏(おうばく)といった生薬が含まれているのですが、これら2つがとても苦いため、組み合わせて作る漢方薬も苦いものになってしまいます。
ですが、苦味の力によって体の余分な熱を冷ます漢方薬なので、この漢方薬にとって苦味成分はなくてはならないものだといえるでしょう。
漢方薬の飲み方は?
漢方薬というと粉末や粒剤をイメージする方が多いのではないでしょうか。ですが、他にも様々な種類があるのです。
粉末
散剤と呼ばれます。これは生薬を粉末にしたもののことで、熱に弱い成分や水で抽出されない成分を摂取するのに適している方法だといえるでしょう。
煎じ薬
生薬と水を入れて加熱して煎じる方法です。「○○湯」などの名前がつく漢方薬が該当します。
丸剤
粉末の生薬に蜂蜜などを加えて丸めたものです。
エキス剤
漢方薬は苦くて飲みにくいと悩んでいる方におすすめ。漢方薬を抽出し、それをスプレードライすることによって顆粒や錠剤に加工します。
煎じ薬とは違って煮出す必要もないので携帯しやすいのも魅力ですね。ただ、煎じ薬に比べると効果は弱まります。普段家では本格的に煎じ薬を取り入れているけれど、出張中などの理由でそれが難しい場合もエキス剤ならば取り入れやすいでしょう。
最適な漢方薬を探すには?
あまりにも味の好みが合わない漢方薬は長続きしません。そのため、自分に合ったものを医師や薬剤師に相談した上で探してもらいましょう。
漢方薬局で相談をするのがおすすめ。こちらも参考にしてみてくださいね。
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漢方薬の形状の選び方と飲み方についての解説
漢方薬にはさまざまな形状(剤形)がありますが、形状ごとに効き目も違うため、自分に適した形状を選択することが大切です。また漢方薬を服用するときの飲料についても注意点があります。
漢方薬の効果を得られやすい「粉末(散剤)」
粉末の漢方薬(散剤)は、原料となる生薬を細かく砕いたものです。生薬の成分を丸ごと服用するため、水に溶けない成分や、お湯で煮出すと効果が弱まる成分を含む生薬などについては粉末が適しています。
ただ、粉末は生薬の風味がダイレクトに感じられるため苦手とする人も多いようです。苦手な薬を飲み続けるのはストレスになりますから、漢方薬に苦手意識のある人は無理に粉末を選ぶ必要はありません。しかし、漢方薬の効果を弱めることなく得たい場合には、粉末で服用するのがよいでしょう。
血行改善も同時に行える「煎じ薬」
煎じ薬はもっとも古くから存在する、漢方薬本来の形状です。温かく煮出したお湯を飲むことで血行改善などの副次的効果もあるので、漢方薬の恩恵を十分に得るには煎じ薬がベストといえるでしょう。
もっとも、煎じ薬をつくるには手間暇がかかるため、主婦や在宅で仕事をしている人など時間に余裕のある方でないと継続は難しいかもしれませんね。
また、煎じる過程でかなり強い匂いが発生しますから、自分や家族が「漢方薬の匂いが好きではない」という場合や、「賃貸なので部屋に生薬の匂いをしみこませたくない」という場合は、無理に煎じ薬を選ぶ必要はありません。
苦味や強い香りを感じさせない「丸剤」
粉末にした生薬を蜂蜜などで丸く固めた丸剤は、生薬の成分を丸ごと服用できる点で散剤と同じです。また、舌やのどに直接生薬の粉末が触れ、苦味や強い香りが口の中に残ることもないため、ストレスを感じることなく長く服用できます。
場所を選ばず飲みやすい「エキス剤」
現代の主な漢方薬は、大半がエキス剤として流通しています。これはクリニックで扱う漢方薬の大半がエキス剤だからです。[注1]
エキス剤の形状は、粒の小さい順に粉末・細粒・顆粒・錠剤と4種類あります。ドラッグストアでは錠剤も市販されていますが、クリニックや漢方専門薬局などで扱うエキス剤は粉末・顆粒・細粒のいずれかになります。
エキス剤のメリットは、なんといってもその飲みやすさと携帯性といえます。場所を選ばず水さえあればすぐに飲めるので、出張の多い会社員などにとってはエキス剤が大変便利です。
エキス剤は生薬を煮出してつくるエキスを乾燥させたものですから、煎じ薬と同等の薬効が得られます。
ただし、煎じ薬のように、温かく煮出したものを丸ごと飲むのではなく、一度乾燥させる過程を経ることから、完全な薬効をキープできない可能性があります。そのため、煎じ薬に比べると本来の効果が得られるまでに少し時間がかかる場合もあるようです。
また、錠剤については精製過程で添加物が配合されるため、薬効もそれだけ小さくなります。「漢方薬の味や匂いが大嫌い。粉末のエキス剤なんて少し飲んだだけど吐きたくなる」という人にとっては錠剤がおすすめですが、そうでなければ、十分な薬効を得るためにも錠剤以外を選択するのがおすすめです。
[注1]日本漢方生薬製剤協会:健康を守る 運動・漢方・笑い[pdf]
漢方薬を服用する際の水分に関する注意点
煎じ薬以外の形状の場合、服用するときに水分が必要となります。薬を飲みなれたお年寄りのなかには、錠剤を水なしで飲んでしまう人がいますが、この飲み方は決しておすすめできません。水なしだと薬剤がのどや食道に付着し、粘膜に炎症を引き起こす可能性があるからです。
コーヒー・緑茶・お酒など注意が必要な飲み物の種類
漢方薬を服用する際に、コーヒーや緑茶など、カフェインを含んだ飲料を使うのは避けましょう。生薬のなかには、カフェインとの相乗効果で薬効が急上昇してしまう成分があります(麻黄など)。頻脈や血圧急上昇といった危険な副作用が出る場合もあるため注意してください。
では、アルコールを漢方薬とともに服用することに問題はあるのでしょうか。一般に、漢方薬か西洋薬かに関わらず、飲酒直後の服用は避けるべきだといわれています。飲酒直後は血行がかなり増しており、薬効が過剰に出てしまうおそれがあるからです。
ただ、八味地黄丸のように胃もたれしやすい漢方薬の場合、あえてアルコールとともに服用することで胃もたれを少なくさせるという「民間療法」も広まっています。しかし科学的な根拠は明らかでなく、アルコールが生薬に与える影響も未知数ですので、あまりおすすめはできません。
漢方薬を効果的に服用するタイミングと忘れた場合の対処法
漢方薬は空腹時に服用するのがベスト
漢方薬は食前(食事の30分前)、もしくは食間(食事の2時間後)に服用すると、もっとも効果が得られるといわれていますが、それには理由があります。
食前か食間、つまり空腹時が服用のベストタイミングなのは、漢方薬の吸収と大きく関わっています。[注2]
まず、漢方薬は腸内細菌のはたらきで吸収されます。漢方薬には配糖体(はいとうたい)という成分で構成されています。
その配糖体の一部である糖を腸内細菌が餌として分解、吸収することで効果を発揮します。
食後の満腹時だと腸内には腸内細菌の餌となる栄養分で満たされているため、漢方薬の配糖体の分解が促進されず、結果、吸収効果をあげることができないのです。
もうひとつは成分自体の問題です。生薬のなかには食後のほうが吸収率がよいものもあり、結果、吸収が良すぎて副作用を起こりやすくなる可能性があります。
空腹時に服用することで副作用の懸念を払拭する目的もあります。
また、漢方薬は食べ物の影響を受けやすいお薬です。食後の服用は、胃の中にある食べ物と混ざり合い配合のバランスが崩れ、効果が薄れてしまうこともあるのです。
[注2]日本漢方生薬製剤協会:がん治療と一緒に漢方を[pdf]
服用タイミングの例外
食前、もしくは食間の服用がベストとご紹介しましたが、例外もあります。食前よりも食後がおススメなのは、胃腸が弱く食欲不振や下痢などの副作用を起こす方です。
お腹に食べ物が入った状態で服用することで副作用を軽減させることができます。
もう一つの例外は、風邪をひいたときです。風邪薬として知られている葛根湯は、風邪の初期に効果を発揮しやすい漢方薬です。
熱っぽくて寒気がする、と思ったら、そのタイミングで葛根湯を飲むと1から2回の服用で体が温まってきます。
風邪の漢方薬は、ゾクッときたときが服用のタイミングです。
漢方薬を白湯で飲む理由
今は錠剤になった漢方薬が増え、手にいれるのも簡単、服用するのも簡単になりました。便利に手軽になった漢方の錠剤を服用するときにどんな液体を使っていますか。
お茶、ジュース、牛乳は問題外です。含まれている成分によっては高価が半減してしますこともあります。
冷たいお水もできるだけ避けてください。腸が冷やされ吸収率がわるくなります。
常温のお水、もしくは白湯がおすすめです。特に白湯は、煎じ薬と同じような状態になるため、吸入がすすみます。
飲み忘れたらどうしたらいい
食事の前はどうしてもバタバタしてしまって飲み忘れることが多い、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そういう場合は、食後に服用してください。
漢方薬には、症状があらわれたときに効果を発揮するものと、長時間、継続して服用することで効果がみられるものとがあります。飲み忘れて服用を中断するよりも、食後の満腹時でも良いので毎日、服用するほうが効果が得られます。
今回、忘れたから次の服用時に2回分をいっしょに危険です。効果が大きすぎて副作用を起こす可能性があります。
また、服用時間ですが、副作用を回避するためには、1日2回の場合は6時間以上、1日3回の場合は4時間以上あけて服用をするようにしてください。
漢方薬は継続することで効果を発揮する薬です。ベストは食前ですが、忘れたら食後でもOK。服用しないより、服用を続ける努力を続けることが大切です。
複数の漢方薬や西洋薬の安全な飲み合わせに注意したいポイント
漢方薬は異病同治(いびょうどうち)の自然薬
漢方には、いろいろな症状を同時に治す異病同治という言葉があります。症例によって複数の漢方薬を使う場合と、1つの漢方薬で複数の効果が期待できることもあります。
漢方薬は、複数の生薬を組み合わせることで相乗効果を狙い、最大限の効果を発揮するように調剤されています。自然薬なので体に優しい。効果が緩やかなので副作用の心配が少ないといわれていますが、西洋薬に比べて少ないとはいえ、副作用やアレルギーを起こすことが知られています。
複数の漢方を飲用するときは同じ生薬が重ならいようにすることが大切
漢方薬は数種の生薬を組み合わせているのが基本です。併用するときには同じ生薬が重なっていないか注意し、1日の摂取量をオーバーしないことが大切です。特に気を付けたいのが甘草(かんぞう)です。
甘草は風邪薬として販売されている葛根湯(かっこんとう)をはじめ、加味逍遥散(かみしょうようさん)、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)など保健が適応される漢方薬の約7割に使われています。
甘草が摂取過多になると偽アルドステロン症という副作用を発症する場合があり、体内に塩分と水分が溜まり血圧上昇やむくみが、またカリウムが失われることでしびれやだるさ、筋肉痛などが起こる場合があります。
飲み続けると筋肉の破壊、不整脈など危険な状態になる可能性もあります。
複数の漢方薬を併用するときには、生薬の重ならないよう十分に気をつけてください。
よく使われる生薬と副作用、漢方薬の種類
重複を避けるためには、漢方薬を選ぶときに漢方薬名だけでなく使われる生薬がなんなのか種類を確認すると同時に、その生薬にどんな副作用があるのかを知っておくことが大切です。
保険調剤薬によく使われている生薬には次のようなものがあります。
生薬名 | 麻黄(まおう) |
---|---|
副作用 | 血圧上昇、動悸、発汗、食欲不振、吐き気 |
漢方薬 | 越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)、葛根湯、防風通聖散 |
生薬名 | 桂皮(けいひ) |
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副作用 | 発疹、掻痒(かゆみ) |
漢方薬 | 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、安中散(あんちゅうさん)、葛根湯 |
生薬名 | 大黄(だいおう) |
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副作用 | 下痢、腹痛 |
漢方薬 | 大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)、防風通聖散、柴胡加竜骨牡蛎(さいこかりゅうこつぼれいとう) |
生薬名 | 石膏(せっこう) |
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副作用 | 胃もたれ、食欲不振、吐き気 |
漢方薬 | 白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)、消風散、防風通聖散 |
生薬名 | 附子(ぶし) |
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副作用 | 血圧上昇、動悸、発汗、のぼせ |
漢方薬 | 八味丸、桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう) |
生薬名 | 地黄(じおう) |
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副作用 | 胃もたれ、食欲不振、吐き気 |
漢方薬 | 芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)、三物黄芩湯(さんもつおうごんとう) |
生薬名 | 人参 |
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副作用 | 発疹、掻痒 |
漢方薬 | 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)、小柴胡湯(ショウサイコトウ)、加味帰脾湯(カミキヒトウ) |
漢方薬と西洋薬を一緒に飲んでも大丈夫
漢方薬と西洋薬を併用して服用するのか、基本的も問題ありませんが、実際の服用にさいして注意しなければならない点もあります。
まず、反対の効果をもつものを併用すると、効果を相殺してしまうおそれがあります。
例えば、西洋薬の解熱剤と漢方薬の体温を上げるものなどがあげられます。
どうしても併用したい場合は、医師に確認することほうが良いでしょう。[注1]
また、飲用も時間をあけて飲みましょう。食物の影響を受けやすい漢方薬を食前に飲み、食後に西洋薬を服用するという具合です。
ただ、西洋薬でも食前に飲まなければならないタイプもありますので、その場合も医師に相談することをおすすめします。