冷え性ってなに?
低体温と冷え性の違い
そもそも冷え性というのは、体温が低くい方ほど起こりやすいというものではありません。
例えば平均体温が36.0℃以下の人は低体温と呼ばれる部類に入りますが、その中の全ての人が冷え性であるということはありません。
冷え性というのは、体温が36.0℃だろうが37.0℃だろうが症状が出る人は出る症状なのです。
冷え性というのは低体温と全くの別物なのです。
そのことから低体温=冷え性という結びつきはありません。
基礎体温が高くても冷え性になる可能性は十分あるのです。
冷え性という症状
冷え性が低体温ではないということを理解してもらったところで、冷え性はどんな症状なのかを説明していきましょう。
冷え性とは主に手足の末端の慢性的な冷え・痛みまたは、下半身全体の冷えなどが挙げられます。
手足や下半身の冷えが続くと痛みや不眠、体調不良などを引き起こします。
さらに冷え性と自覚症状がない隠れ冷え性というものもあります。
症状として、低血圧・貧血・頻尿・便秘・内蔵疾患という類のものがあり、これらの症状で困っている人は内臓の冷え性が引き起こしているものの可能性もあります。
冷え性の原因
薄着
寒さを感じる気候のときはしっかり暖を取れる服装をすることが大切です。
女子高生は冬場でもタイツなどを履かずに靴下ですし、スカートの中にインナーショートパンツなどをはかずに生活しているので、若くても冷え性の人が多いと言われています。[注1]
少し恥ずかしいという人もいますが、寒い時は毛糸のパンツや腹巻き、厚手のタイツなどを着用すると、体が芯から冷えることを防ぎ、冷え性の予防と改善ができますよ。
冷房の使いすぎ
1日中冷房の入った室内で仕事をしていて、冷え性になってしまうという人はとても多いです。
夏場暑い中外回りをして帰ってくる営業職の人は、冷房がしっかり効いていないとなかなか涼しくならないので、つい冷房を強めてしまう傾向に…。
特に男性はスーツのジャケットを夏でも着用することが多いため、かなり暑く感じてしまうのですね。
しかしオフィスワークをしている女性はオフィスカジュアルで薄着をしている人が多いですし、男性と比較して脂肪が多い女性は体が冷えやすいので、冷房の効いた室内に1日いると冷え性になってしまいます。
最近ではクールビズや省エネなどの観点から冷房を弱めるように意識している企業が増えていますが、まだまだ女性にとっては寒いオフィスの様子。
ひざ掛けや羽織ものなどを持参し、冷えを予防しましょう。
運動不足
運動をすると血行がよくなり、体が温まります。
また筋肉がつくことで代謝機能が高まって、常に温かい体でいられます。
それに反して、運動不足になってしまうと血流が悪くなるのはもちろん、代謝が落ちて脂肪がつき、冷えやすい体に…。
運動は体が温まるという効果もありますが、定期的に行うことで冷えにくい体を作ることもできますよ。
最近の社会人はなかなか運動する時間が取れず、冷え性になってしまっている人がとても多いです。
座りながらでも手足を動かしてみる、通勤時にはできるだけ階段を使う、早足で移動する、といったことを心がけるだけでも冷え性予防につながるでしょう。
睡眠不足
赤ちゃんのころは眠くなると体が温かくなるといわれていますが、大人も同様に眠くなると手足がぽかぽかと温かくなってきます。
このとき、四肢の末梢血管が拡張し、皮膚表面の温度が高くなっています。このタイミングでしっかりと休息を取ると、眠ったときに深部の体温が下がり、深い眠りにつけるのだとか。
睡眠時間が短く深部体温がしっかりと下がらないと、体温コントロール、起床後のパフォーマンスに影響が出てしまうことも明らかになっています。[注2]
冷え性を予防、改善するには、夜更かしをやめてしっかりと睡眠を取ることも大切なことなのです。
偏った食生活
食生活と冷え性には大きな関係があります。
わかりやすいところだと、夏に暑いからといって冷たいものばかり食べていると、代謝機能が下がり、内蔵の働きが悪くなり、冷えやすい体になってしまいます。
毎日の食事はとても重要です。食材には体を冷やす食べ物と温める食べ物があるので、体を冷やすものばかり食べていると、当然ながら冷えやすい体質になってしまいます。
体を温める食材として知られているのは、ごぼうやれんこんなどの根菜、しょうが、ネギなど。
逆に体を冷やす食べ物としては、トマトやナスなどが代表的です。
特にナスは「秋茄子は嫁に食わすな」という言葉があるほど。
この言葉は、秋ナスはおいしいから嫁に食べさせてはいけない、というちょっと意地悪な意味合いだと思っている人も多いですが、秋ナスはおいしいけれど、体を冷やしやすいので大切なお嫁さんが食べすぎないようにという意味があるのだそうです。
冷え性の方は体を温める食材を意識して食べるようにすることで、冷え性の予防と緩和につながるでしょう。
また、食材だけでなく、その温度も重要。熱いものはあまり好きじゃないという人も多いですが、温かいスープは体を芯から温めてくれますし、お味噌汁はそのものが温かいのはもちろん、発酵食品である味噌が体を温めてくれる効果もありますよ。
ストレス
ストレスは血管を収縮させてしまい、血流を悪くしてしまいますので、冷え性になりやすくなってしまいます。
とは言え、学生でも社会人でも、主婦でも子どもでも、今の時代にストレスを一切感じることなく生活するのは不可能といっても過言ではないでしょう。
であれば、上手にストレスを緩和する術を身につけるのが得策です。
体を動かすことは冷え性の予防と改善につながりますし、体を動かすこと自体がストレス解消になりますので、何か手軽に楽しめるスポーツをするというのも良いですね。
汗をかくこともストレス解消になるといわれています。
お風呂にゆっくり入ってじっくり汗をかくと同時に、リラックスできるアロマテラピーなどを活用すると、物理的に体が温まることに加え、アロマテラピー効果でよりストレスが軽減できるかもしれません。
深い睡眠を取ることもストレスの緩和につながります。
お風呂から上がり、体温が下がっていくときがもっともよい眠りに入れるタイミングだといわれていますので、お風呂上がりはスマホやパソコンをするよりも、そのままベッドに入ってぐっすり眠ってしまいましょう。
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスが乱れると、自律神経にも影響を及ぼし、冷え性の原因となってしまいます。
特にホルモンバランスが乱れやすいタイミングとして代表的なのは、月経の前後、季節の変わり目、更年期などです。
月経のときは直前にPMS(月経前症候群)に悩まされる人も多いと思うので、ホルモンバランスが乱れている自覚があるのではないでしょうか。実際に月経前は普段よりも冷えを感じるという人も多いようです。
そのほか、妊娠初期の人、過度なダイエットに取り組んでいる人なども、ホルモンバランスが乱れやすいです。
月経や妊娠、更年期障害などは避けられないものではありますが、できるだけ規則正しい生活と食事を心がけること、ストレスを溜めないようにすること、適度な運動を心がけることなどが、ホルモンバランスの乱れを防ぐことにつながります。
血行不良
冷え性引き起こす原因は体内の血行不良。
体は常に血液を循環させて、酸素と栄養を送っているので血行不良になってしまうと体は正常に機能しなくなってしまいます。
とくに冷え性が手足に出やすい理由は、血液を送るポンプの役割をしている心臓に一番遠い位置にあり、血液が届ききっていないのが原因です。
届かない理由として以下のことが考えられます
- 冷房や冷たい飲み物で体を冷やしてしまっている
- 偏った食生活をしている
- 長時間同じ体勢で生活している(エコノミークラス症候群)
- 運動不足
- 内臓疾患
以上のことが原因として考えられます。
最後にあげた内臓疾患というのは、血管の動脈硬化や心臓の異常などの重篤な疾患の場合もあります。
この2つが引き起こると血管がつまり血液が流れにくくなり、やがて脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気へとつながるのです。
そのことから冷え性と言えども侮れない症状なのです。
自律神経乱れ
結論から言えば自律神経の乱れも血行不足なのですが、なぜ自律神経が血行不足を引き起こすのか説明していきましょう。
自律神経の役割というのが、内臓や血管という体の大事な部分をコントロールしているものです。
そのことから自律神経は冷え性という、血管と内臓の異常からから発症する症状には大きな関係があるのです。
自律神経が乱れてしまうと当然、血管と心臓の動きをコントロールしきれなくなり、血液循環が悪くなります。
また胃や腸なども血液循環が悪くなるわけですから、正常に機能しなくなり便秘などの原因にもなります。
これが結果的に、冷え性という症状で体に現れてしまうのです。
自立神経が乱れる原因として考えられる原因の大半は、他ならぬストレス。
現代は、昔と違い社会に出て働く女性は桁違いに増えているので、その影響を受けてストレスを感じる女性が増えているのです。
それがけ結果的に冷え性の症状が出やすい女性に目立って見られ、全体的に冷え性の人を増やしてしまう結果になっています
冷え性は今や現代病と言っても過言ではないほど、悩んでいる人が増えているのです。
冷え性の改善に有効な漢方の効果とは?
冷え性を改善するのには足を温めることや運動などもあげられますが、それはとりあえず置いておいて、根本の体内から改善を促さなくてはなりません。
そこで冷え性を改善するのに有効なのが漢方。
冷え性を改善に漢方薬を用いる場合、その冷え性の原因を解消する漢方薬が処方されます。
例えば更年期障害・ホルモンバランスの乱れなどにより冷え性が発生している場合は、原因である卵巣などへ作用する漢方薬を用いる、という具合です。
更年期障害・ホルモンバランスの乱れに効果的な漢方薬はいろいろとありますが、代表的なものは以下の通りです。[注3]
- 酸棗仁湯
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯
- 抑肝散
- 加味逍遙散
また、女性の冷えで圧倒的に多いといわれる、血が足りず循環が悪くなっている「虚血」の症状には、以下の漢方が用いられることがあります。[注3]
- 温経湯
- 十前大補湯
- 当帰芍薬散
漢方薬は、冷えを改善するという考え方ではなく、冷えの原因を改善して冷え性という症状を改善するという目的で使用されます。
西洋医学の薬とは異なり、漢方は体質改善を目指して使用されるためすぐに効果が出るというものではありませんが、継続して使用することで少しずつ効果が期待できるでしょう。
体を体内から温める「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」をピックアップ
漢方名:当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は手足の冷え・下半身の冷え・腹痛・月経痛に有効とされている漢方です。
配合されている漢方は以下の通りです。
- 当帰
セリ科の植物で体を温める作用と鎮痛・鎮静・強壮効果があります。 - 桂皮
クスノキ科の植物で皆さんもご存知のいわゆるシナモンです。
体を温める効果と解熱・鎮痛・整腸という効果もあります。 - 芍薬
ボタン科の植物で筋肉に対して鎮痛・鎮痙・血管を引き締める効果があります。 - 木通
アケビ科の植物で利尿作用・毒素を体外に排出する効果があります。 - 細辛
ウマノスズクサ科も植物で鎮痛と体を温めながら熱を下げるという効果があります。 - 甘草
マメ科の植物で体の緊張を和らげる効果をはじめ、鎮痛・鎮痙・解毒・鎮咳という効果があります。 - 呉茱萸
ミカン科の植物で体内を温める効果があります。 - 大棗
クロウメモドキ科の植物で体を温め、体の緊張を和らげ消化管の回復効果があります。 - 生姜
日常的に料理にも使われる生姜を乾燥させたものです。
発汗効果・食欲増進・胃腸を整える効果があります。
以上のものが配合された漢方薬が「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」です。
体を体内から温めるということを中心に考えられた漢方なので、冷え性にはとても有効なのです。
参考文献
漢方と並行して行いたいこと
食生活を整える
体調を整えるには食生活を整えることが重要です。
とくに女性はダイエットを意識しすぎて食事の量を減らしたり、炭水化物を抜き続けるなど無理をしている人が多いので、そのような食生活を続けていると自律神経が乱れて冷え性を引き起こす原因になります。
逆に暴飲暴食、野菜や果物、動物性タンパク質をとらないなど栄養バランスの崩れた食事を取っているとこちらも自律神経が崩れます。
そのことから野菜や果物を中心に、様々なものをバランスよく取り込むことが大事になります。
適度な運動
適度に運動をすることも冷え性を予防するのには大切なことです。
運動をしないと、体内が活性化されないので血の巡りが悪くなります。
逆に運動をすると、体内に酸素を取り込みやすくなり、血管内の血の巡りも良くなります。
さらに体を温める効果もあります。
ハードなマラソンをしてほしいという訳ではなく、町内を一周する(1~2㌖程度)といったことや移動中にエレベーターを使わないなど軽い運動でいいので、とにかく体を動かすことを心がけましょう。
シャワーだけ入浴をやめる
近年、お風呂をシャワーだけで済ませてしまう人が非常に多い気がします。
シャワーだけでも体の汚れは落ちるので良いのですが、冷え性に対してはそうではありません。
シャワーだけだと皮膚にお湯をかけている状態なので体内までは温められません。
入浴後、体が冷え切ってしまう可能性もあります。
しかしシャワーだけ入浴をやめて湯船に浸かるようにすれば、体内全体を温めることができます。
体内が温まっていれば入浴後も湯冷めの心配はありません。
また新陳代謝も上がり、血の巡りも良くなります。
冷え性の方にとってはいかに血液を体内で循環させて、新陳代謝を良くしていくが重要になります。
[注1]日本健康学会:異なる気候条件下で暮らす女子高校生の「冷え性」と生活状況の検討 [pdf]