アレルギー疾患
このページでは、漢方のアレルギー疾患に対する効能、とりわけ関心度の高いアトピー性皮膚炎との関わりを重点的に解説していきたいと思います。
漢方とアレルギー疾患~とりわけ"アトピー性皮膚炎に対して
では、アトピー性皮膚炎から始めましょう。この皮膚炎は一度発症してしまうとなかなか治りにくいのが厄介なところ。原因としては免疫の過剰反応によって起こるとされており、遺伝的なアレルギー性素因によるものと考えられていますが、食生活や 生活習慣、生活環境なども大きな影響を及ぼすとのこと。
西洋医学では、ステロイド配合の軟膏や免疫を調整する飲み薬などが主ですが、一時的に症状が良くなっても薬の効果が切れると再発を繰り返してしまうケースが多いようです。というのも、西洋医学の薬はただ症状を抑えることを目的にしているからです。一方漢方の薬は、局所体温と局所水分代謝を改善し、さらに体全体の機能を高めることを目的にしています。そのため体質が改善され、薬を飲まなくなっても効果が継続するのです。
参考:2016年1月発行京都府立医科大学雑誌p135〜143<特集「漢方療法の最新情報」>皮膚科領域の漢方療法―アトピー性皮膚炎に対する漢方併用療法―中井章淳(京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚科学)
また、ステロイド薬に対して副作用への心配や薬そのものへの拒絶感なども根強いのだとか。そうした事情もあり、漢方へ寄せられる期待が年々高まっているそうです。
そんな漢方による治療では、アトピー性皮膚炎を「乾燥性タイプ」と「湿潤タイプ」にわけ、それぞれに適したものを処方するという考え方。具体的には以下の通りです。
●乾燥性タイプ
肌がカサカサに乾燥し、パラパラと粉をふくタイプ。冬場に悪化することが多い。
用いられる漢方薬 ⇒ ・温清飲(炎症や熱感ありの場合) ・当帰飲子(炎症や熱感なしの場合)
用いられる漢方軟膏 ⇒ ・紫雲膏
●湿潤性タイプ
炎症(熱感)がありジュクジュクと滲出液が滲み出てくるタイプ。夏場に悪化することが多い。
用いられる漢方薬 ⇒ ・消風散(滲出液が多い場合) ・黄連解毒湯(滲出液が少なく炎症が強い場合)
用いられる漢方軟膏 ⇒ ・中黄膏
参考:京都府立医科大学雑誌2016年2号<特集「漢方療法の最新情報」>「皮膚科領域の漢方療法―アトピー性皮膚炎に対する漢方併用療法―」中井章淳(京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚科学)
花粉症や蓄膿症、鼻炎などのアレルギー疾患には?
続いて、その他のアレルギー疾患についても述べていきましょう。もはや国民病と言ってもよい花粉症。定番とされているのが「小青竜湯」。体力がなかったり胃腸があまり強くない方向けには「苓甘姜味辛夏仁湯」がよいとされています。また、目のかゆみの軽減をより重視するのであれば「越婢加朮湯」が良いとされています。
一方、花粉症のように季節性ではなく、一年を通じて悩まされる蓄膿症や鼻炎などに対しては、当然ながらアプローチも変わってきます。鼻水だけという場合には花粉症にも定番の「小青竜湯」が用いられますが、肩こりや頭痛を伴う鼻炎には「葛根湯」がより適しているとのこと。蓄膿症に対しては「葛根湯加川芎辛夷」。葛根湯に、鼻炎薬などに使われている辛夷、血行改善と鎮痛作用がある川芎を配合しています。
参考:2013年01月19日発行東海大学医学部専門診療学系漢方医学主催「第31回漢方教室(漢方)もう鼻炎には悩まない!-漢方で花粉症も蓄膿症もスッキリ-」
以上、ざっとご紹介してきましたが、これら以外のアレルギー疾患に対しても漢方による改善が期待できます。特に西洋薬で効果が出ないとお悩みの方は、ぜひ検討してみてください。
しかし、何度も繰り返しています通り、どの漢方薬を服用するかは専門家が判断を下す領域。決して、ご自分で勝手に判断するのはお止めください。